いちひめ初期研修医1年目を終える | feel my force

いちひめ初期研修医一年目を終える

子育て

またまた現在に戻ります。

約1年前、国立大学医学部医学科を無事に卒業し、医師免許を取った娘。

初期研修医の身分になり、おかげさまで無事に1年過ぎました。

ありがたいことに、元気に研修を続けさせていただいています。

ありがとうございますありがとうございますありがとうございます

今日は、娘の初期研修医ライフや立ち位置について。

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初期研修カリキュラム

日本で認められている医師とは、

  1. 医学部を卒業
  2. 医師国家試験に合格→医籍登録
  3. 初期研修(2年間)

を修了した人となっています。ですから、正式にいえば、娘はまだ”一人前の医師”ではありません(医学生や初期研修医に認められた医療行為は行えます)。

ちなみに…

東大医学部在学中に司法試験に合格した河野玄斗さんは医師国家試験に合格はされましたが、医籍登録をされていません。

また、2012年東大理三トップ合格の清水元喜さんは、初期研修修了後に東大の情報理工学研究科修士課程に入学しなおされて研究活動をされています。

いろんな道がありますね…

初期研修のカリキュラムは厚生労働省によって定められています。

原則として、内科24週以上、救急12週以上、外科、小児科、産婦人科、精神科及び地域医療それぞれ4週以上の研修を行う。なお、外科、小児科、産婦人科、精神科及び地域医療については、8週以上の研修を行うことが望ましい。

となっていて、

これ以外により深く長く学びたい科を選択することができますので、必修の科をさらに深く学ぶために選ぶ人もいれば、必修にない科(眼科・整形外科・耳鼻咽喉科とかとか…)を選ぶこともできます。

日本じゅうのどの病院で研修しても同じことが学べるはずですが、各病院で力を入れている科の特別カリキュラムが用意されていたり、市中病院と大学病院では扱う症例がすみ分けられていたりするため、

どの病院で研修を受けるか(=自分がどの科のどんな医師になりたいか)のイメージは医学部生時代にある程度道筋を持っていた方が有利になります。

初期研修医ライフ

朝が早い夜も遅い

超ざっくりすぎてごめんなさいなんですけど、要するに、勤務時間が長いみたいです。

とある内科(入院病棟)
  • 7:00~8:00
    出勤

    出勤時刻は科によって変わります。

    • 担当患者さんに一日二度は会いに行く
    • 各種検査や治療のサポート
    • 症例検討
    • カンファレンスでの発表
    • カルテ記入(担当患者さんは10人~20人)
    • 緊急入院があった場合は当日中にやるべき検査や治療を終えるまでは帰れない
    • (以上順不同)

    お昼ご飯は各自とれる時間に。お夕飯も途中で食べたり食べなかったり。

  • 22:00ごろ
    退勤

ただこれは、病院によって・科によってずいぶん差があって、例えば

「初期研修医さんは17時退勤」と決まっている病院もあれば、

「初期研修医さんでも残業あり・宿直あり」の病院もあります。

 

上級医になってからも、例えば女性が家庭との兼ね合いで辞めなくてもいいように

「宿直や休日出勤なし」を選べる病院もあり、この辺は様々みたいですね。

 

初期研修医に割り当てられているお仕事はたくさんあって、最初の数か月はとにかく仕事を覚えること・手技(目的に応じて、いろいろな血管にいろいろな針を刺す、とか、きれいに縫う、とか…)を正確にやることに追われて、毎日くったくたになっていたようでした。

仕事・練習・勉強・仕事・勉強・練習・練習・勉強・練習・仕事…

お願い、他人様の身体に”ぶっさす”のだから、どうかどうか正確にやってね…と祈るワタシ。

とにかく記録することが多い(誰が担当になってもわかるように)・PHSによく電話がかかってくる(最初は判断できないことが多いので上級の先生にお伺いを立てる分長くなる)・そして基本的な手技…

1~2か月に一度のペースで科が変わるごとに「はじめまして。よろしくお願いします」から始まるのも結構きつい、と言っていました。

いや~、正直、受け入れる方も大変ですよね。。。

いろいろご迷惑をおかけしたと思います。

エルステ(人生初の手術)

外科部門では週の半分が手術日です。それ以外に緊急手術もあります。

もちろん初期研修医も手術室に入ります。

手術室での初期研修医のお仕事はサポート的な内容で、吸引や最後にちょっと縫わせてもらったりさせてもらえるようですが、

所定の手技を学んだ後に、簡単な手術の執刀医をさせてもらうこともカリキュラムの中に入っています。

なななんと…

虫垂切除や鼠径部ヘルニア、胆嚢摘出などが初めての手術としての対象なのだそう。

娘も鼠経部ヘルニアの手術をさせていただきました。

初期研修医が手術⁉

初期研修医でも手術できるんだ。

っていうか、いつかしないといけないのだから、カリキュラムに入っていて当然かぁ。

とはいえ…

練習設備も整っていて何度も練習したそう。それをパスしてからの本番です。

執刀医は頼りないとしても、”助手”の先生方が蒼々たるメンバーですから、絶対失敗することはないと。

そりゃそうだ。そうじゃないと、とても…

娘いわく「つつがなく進んで、きれいな手技だと、とっても褒められた―」と言っていました。

親としては、娘のこの言葉をきいて、相当ほっとしました。ありがとうございますありがとうございますありがとうございます

「エルステ」とは人生初の手術のことをこのように呼ぶのだそうです。

通常、エルステ終了後に科内でお祝いのお食事会をしていただけるそうですが、コロナのため中止。「何にもないんだよー」とかなり残念そうだったので、実家からお祝いを送りました。

メンタルも体力もコミュ力も求められる

医師になるために、みなさん持久力や瞬発力をもってここまで勉強してきたわけなので、仕事をしていく上での知識の吸収力が高くなければいけないのは当然として、ここが一番のポイントじゃないかと思えるのが

コミュ力・体力・メンタルの強さ。

医療は人間様が相手ですから、とにかくコミュ力が大切です。患者さんだけでなく、ご家族との距離感。そして、裏付けのある知識と冷静さ、表現力。

医療は同じでも、患者さんの基礎体力やメンタルによって治るスピードが変わるので、患者さんに寄り添うことは医師としてとても重要なことなのだそうです。

患者さんのその日の体調はもちろん、家庭環境・お仕事・普段の生活などいろいろなことを情報として得ることも大きな仕事の一つになります。

また、WEBで多くのことを調べられる時代を反映して、いろいろなことを調べて質問してこられる方もいらっしゃるそうですが、それにも納得がいかれるまで説明するのも大事な仕事です。

当然、怒りっぽい方だと気分もダダ下がりなのだとか。でも、ダダ下がりだろうとなんだろうと、すべての患者さんに同じレベルの医療を提供するのがお仕事。

大変ですねぇ。

ただこれも科によって・病気によってとるべき距離感が変わるので、感覚的に自分と合っている科を見つけるしかないと言っていました。

そして、医療スタッフ同士のコミュ力も重要で。。。

娘が言うに、医療現場のスタッフさんって、

みなさんが神レベルにいい人

なのだそうです(ときどきテレビ番組で描かれるような”ひねくれた人間関係”は全然ないと言っていました)。

上下関係あり、左右関係ありのなか、チームとして協力して、患者さんが笑顔で退院されることを目標にやるためには、一人一人が自分の役割を果たし、気持ちよく働ける現場をみなさんが努めて作っていると感じると。

そういう空気が、新人をそういう医師に育ててくれるんですよね、皆さん責任をもってお仕事なさっていらしていて素敵です。

基本給が高いわけではない

先日、Twitterで”給与明細買い取ります”的なアカウントを見つけまして、医師の方の給与明細も出ていたのですが、

医師の基本給が高いわけじゃない

んですね。

手術や宿直の手当が加算されることで一般的な職業より多くなっているようです。娘の場合、手当のつく科の月のときはちょっと高く、そうじゃないときは加算がない、と。   

また、これは各病院のサイトに載っていますが、同じ初期研修医でも地方の病院の方が高めに設定されているようですね。 

余談ですが、地方病院で初期研修された後、厚生労働省の医系技官になられた先輩が、

「働く時間は変わらないのに(国のお役人も驚くほど残業が多いらしい)、収入が半分になってしまった」

と嘆いていらしたそう。

地方病院のなかには、?っていうほど高め設定の病院もありますからね。。。

医師だから一律お給料が高くなるというわけではなく、どこでどう働くかで変わるようです。。。

休日

休日や有給休暇はちゃんといただけています。その代わり、宿直や祝祭日の日直、夜勤のある科もありました。

ありがたいことに年末年始は帰省してきましたが、元旦にお当番が当たった同期の方もいらっしゃいました。

お疲れ様です

また、娘が働き始めて知ったことですが、宿直と夜勤って違うんですね。

宿直はベッドが用意されていて、用事がなければ寝ていてもいいのに対して、夜勤は勤務していなければいけない。

あー、だから宿直明けそのまま日勤がありうるんだ…

娘が夜勤をしたのは救急科のときだけですが、”夜勤明け日勤”はないわけか…

ただこれも、時間になったらパキッと交替できるわけではなく、状況次第・患者さん次第みたいです。

医療はチーム戦

学生のときから”先生”

娘がお世話になった範囲しかわからないんですが、病院のスタッフさんは必ず名札をつけていまして、

医師の名札で、「学生」「初期研修医」「専門医」「教授」みたいな位置づけは患者さん側からは全くわかりません。

また、先生同士も上下関係なく「◇□先生」と呼びますので、これでもわかりません。

 

さらに、手術前のチーム紹介のときも、立ち位置は医師の中での一番下ですが、医師以外の方よりも先に紹介されます。 

そういうルールの世界だといえばそうなのでしょうが、娘は当初戸惑っていました。

たぶんこれは、医学の道を歩み始めたすべての学生さんが経験する思いなのでしょう。

と同時に、責任ある立場であるということを身体で覚えさせられると言っていました。

確かに責任感をしっかり持ってないと医師は務まらないか…人生初の執刀医になったときは…さぞ身が引き締まったことでしょう

チームで動く

どの科でも、初期研修医の娘は、必ず上級医の先生とチームを組んで対応します。

ということは、上級医の先生方も、初期研修医の出来具合でお仕事の進み具合が変わってくるわけで…ここについては、科によって初期研修医をたいしてあてにしていない科もあれば、がっつりお仕事が割り当てられている科もあり、それぞれの科のカラーの違いがあるようです。

カンファの発表資料を、数日前までに上の先生にチェックしてもらい、直してもらい、教えてもらい…

やっぱり、即戦力にはならないですから…いや~受け入れる方も大変ですよね。。。いろいろご迷惑をおかけしたと思います(2回目)。

また、同期の初期研修医の記録を参考にすることもあり、人によって検討の深さや広さの違いがそのまま記録に残ってしまう~~~、がんばらないと~~~~というプレッシャーも。

同期は、仲間でありライバルでもあるのは、どの世界の新人も同じ…

常に駆け足で毎日を過ごしていたようでした。

そういうときこそ身体を大切にしてね。。。

統計資料より

さて、今さらながら遅い、医師というお仕事をしている人たちの男女の比率や年齢層、専門科などが気になったワタクシ。

厚生労働省では1年おきに、医師の性別・年齢、業務の種別、従事場所及び診療科名などの資料を発表しています。そこで、はすちゃん的に興味深いポイントをピックアップしました。

参考 医師・歯科医師・薬剤師統計(旧:医師・歯科医師・薬剤師調査):結果の概要

男性と女性

令和2年12月31日現在における全国の届出「医師数」は339,623人で、

男性:262,077人(総数の77.2%)、女性:77,546人(同22.8%)となっています。

男女割合は平成8年で、男性:86.6% 女性:13.4%で、以後20年以上にわたり女性の割合が増加し続けています。

この変化は、女性としてはうれしい数字です。

年代

この表は、病院(開業医さんを含まない)医師の数の変化のグラフです。

毎年医師になる人の総数は医学部の定員や国家試験の合格者などで厳密に調整されていますので変化がないのは当然ですが、全体的には増えていて、一番顕著なのは60歳以上の医師の数が増えていること。これは、日本人の健康寿命が伸びていることとも関係あるのかな?

    

下の表によると、2020年には、70歳以上のお医者さんが20歳代のお医者さんより多くなっていますね。もちろん、20歳代のお医者さんは最短でも24歳以上ですから単純な比較はできませんが、働きたい元気な高齢の方がちゃんと働けるのはいいことですね。

 

さらに上図は、診療所医師(開業医さん)の数です。

平均年齢が上がり続けていますね。診療所で働いている医師の総数が10万人強で、2020年の平均年齢が60.2歳というのは、医師の職業寿命がいかに長いかを表していますね。

世の中の人が役職定年や定年退職を迎え、お給料が一気に下がるポイントであるのとはかなり対照的です。

診療科

こちらは2020年の各診療科別の医師の数です。

内科の先生が多いですね。

次いで、整形外科・小児科・精神科…と続きます。

へぇ~、整形外科…

運動大好きな男性の先生がよく志望されるイメージがあるな

あれ?小児科医って不足してるんじゃなかったっけ?

調べたところ、小児科の仕事量に対する人数が足りないということのようです。

また、小児科は女性の先生の比率が多く、小さいお子さんをもつお母さんがお仕事を続けられない環境だった時代があったことも原因だったようですが、今はどんどん改善されていっているようです。 

初期研修の必修となっている内科の次に長い救急科(12週以上)は、実際には3950人しかいらっしゃいませんね。

それでも必修になる理由が、娘が実際に救急科で研修をさせていただいてわかりました。

救急科では、目の前で苦しんでいらっしゃる方を、どんな順序で対応していくかを広範囲に渡って学び、医師として迅速にとるべき行動を正確に求められ、同時に医療の流れも学ばせていただいたようでした。

とにかく、科によって、アプローチもそこに流れる空気感も全然違うようですね。

ワタシ的にはちょっと不思議なんですけど、毎年医師になる数(約9,000人)は国によってコントロールされているのに、どの専門科に進むかは自由なのだそう。

ですから「うちの科にいらっしゃい」と各科の先生は一応お誘いしてくださるようです。

専門科は自由選択なのに、毎年同程度で科が分かれるのって、素人のワタシ的にはやっぱり不思議。

自分を大切に

おかげさまで、娘にとっての医師の職業は”自分に合っている”と感じているようです。実際になってみないとわからない感覚ですから、医師を目指すことを勧めたワタシとしては賭けでしたが、、、

良かったです。

   

「冷静に丁寧に正確に」

この合言葉って、AKBの合言葉らしいですね。ワタクシそれをあまり認識しないで娘に言ってきたのですが、

いい言葉ですね!

医師という職業は、いつ、どんなときでも高クオリティな仕事を求められます。初期研修医だから失敗してもいい、もありません。常に求められるレベルで行わなければいけないので、

今日ちょっと体調悪いな、とか、今日はやる気が出ない

があったとしても、それが仕事のクオリティに影響しないように、体調や心の調整をしておくよう注意しているようです。

そんなの社会人なんだから当然といえば当然ですけど、クオリティを下げないためには、多少時間がいつもよりかかったとしても、「冷静に丁寧に正確に」を心がけるお医者様であって欲しいと思い、この言葉を使わせてもらっています。

それでも、仕事がうまく進まないとき、夕方から急に忙しくなって帰りが遅くなることが確定したとき、友だちとの約束をキャンセルしなければならなくなったとき…いろいろありますよね…

ときどき、疲れた~といってワタシに連絡してくることがあります。

そんなときは、

絶対に潰れないよう7割の力で、とにかく睡眠と休養をきちんととること。次が労働、次が自己研鑽。

とにかく自分を大切にしてね、を言い続けました。

   

帰省したいなぁ…と伝えてくることもあります。

実家に帰ってくる時間がないことがわかっていても

「帰ってきなよ~」

というと、

「バイバイって言ってまた戻るのも辛いのよねぇ」

と。

わかるわかる。そういう経験も実は大切だよ。

そして最後はいつも、

「とにかく自分を大切に。自分を大切にできる人は他人も大切にできるから。まずは自分を大切に。」

と伝えて、話が終わります。

   

医師の道はまだまだ始まったばかり。

たくさんの教えや学びに感謝して、これからも元気に続けられるよう祈る毎日です。

 

今回もお読みくださり、ありがとうございました。

 

息子の成長の記録は時計の逆回転で綴っています。どうぞ にたろう もご覧ください。

 

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