1歳を過ぎても、単語しか発さない娘。
心配しても仕方ないと思っていた、と以前書きましたが、その根拠としたのが、これ。
Newsweek の特集「0歳からの教育」
でした。その中に、子どもが言葉を覚えるメカニズムについての記事があったんです。
言語は脳のつくりそのもの
胎児の聴覚は早くから発達するため、お腹の中にいる時に既にパパやママの声を聞き分けていると言われています。そして生後4日目には、もう母国語と外国語を聞き分けており、母国語をきいている時の方がおっぱいをよく飲むという報告があります。
と同時に、生後1か月の乳児は、世界中の言語の音を聞き分ける能力を持っているのだそうです。
世界には約6000語の言語があり、さまざまな音の組み合わせがあります。
それが、生後6~10か月の間に周囲の人が使う言語の音だけに耳を傾け、その音節(アクセント)の強弱に反応するようになります。
そして1歳頃になると、意味は理解できないものの、人の話し声を単語の組み合わせとして聞くようになり、単語の理解を始めます。
例えば、誰かがウサギをみて、「ウサギ」と言った時、赤ちゃんは自分の視界にある多くのものからどれをウサギとして抽出すればいいのか選択するのではなく、その光景全体を記憶していくうちに、共通している「ウサギらしきもの」を「ウサギ」として覚えていくのだそうです。
1歳半になると、その理解力が爆発的にアップし、2時間に1単語のペースで覚えていきます。
こうやって、多くの子は2歳までに1000~2000語を覚え、二つの単語を組み合わせて使い始め、さらに3歳頃になると、「歩く」→「歩いた」、とか、「どうやって」や「それから」といった機能語も使えるようになります。
さらに重要なのが、言葉の並べ方の違いで、意味が全く変わることにも気づくようになります。
「ママが、わたしをだっこする」と「わたしが、ママをだっこする」
みたいなね。
実はこの認識がとても重要で、学習能力の高いチンパンジーでも超えられない壁なのだそうです。
そしてこの認識こそ「言語は(時計の読み方のように)習うものではなく、人間の脳のしくみそのもの」なのだそう。
「…クモが巣の作り方を知っているのと同じような意味で、人間も言語の使い方を知っている」。鳥が教わらなくても空を飛ぶのも、また同じ。人間は「言語を話すようになる動物」と言えるだろう。
スティーブン・ピンカー『言語を生みだす本能』より
例えば、聴覚障害のある子どもをもつ親が手話を習って話をするとき…親の手話は文構造がバラバラで動詞も現在形しか使えないとしても、子どもは、文法的に正しい手話を流ちょうに使いこなすようになるとか。
ただし、この時期(3歳まで)に言葉を全く聞かないで育つと、ほぼ例外なく大人になっても言葉を操ることができないのだそう。
31歳まで耳が聞こえなかったある女性は、やがて言葉を覚えたそうですが、「女の人、バス、行く」という具合で、その表現力は文字盤を扱うチンパンジーを超えることはできなかったという報告もあります。
今回の題名の、
「言葉を覚えるのに良い教師はいらない。子どもは自分で文法の規則を見つけ出し、磨き上げ、応用することができる」(エリッサ・ヌーボート:認知学者)
は、まさにワタシが、言葉の遅い娘に過度な心配をしないで過ごせた、救世主のような言葉でした。
このおかげで、とにかくたくさんの言葉のシャワーを娘に浴びせよう、きっと娘の脳が育ったらきちんと言葉になって出てくるだろうと、思っていました。
その結果が、これ だったわけですけどね。
以下のメッセージは、フランス在住日本人のお母さんが書かれたお子さんのフランス語習得に関する記事からの引用です。
元記事が削除されてしまいましたので、現在はリンクできない状態です。どうぞご了承ください(2022.12.20追記)
子どもはあっという間に言葉を覚える、というのは嘘!バイリンガルになるには何年かかるのか。
子どもは外国に連れて行ってその国の言葉漬けにしたら2~3か月で覚えるのかと思い、心配いらないわ~と楽観的に考えていたが、1年経ってやっとコミュニケーションが取れるようになった、という経験談。
ちなみに、そのお子さんがフランスへ行ったのが4歳。
「 最初の1年は、親子ともに辛抱の年、ということです。子供は長い間、様々な葛藤を繰り返します。トライアンドエラーを繰り返し、1年過ぎてようやく形になり、2年過ぎてまあまあ良くなり、3年すぎてようやく大きな問題なく学校の課題をこなせるようになります。 …
1年程の海外滞在の場合は、お子さんの外国語には期待しないことです。事前の用意など必要ありません。まして、帰国後の外国語の維持など、考えても仕方ありません。楽しく異文化交流をし、日本とは違う空気を感じれば、生涯の良い思い出となるでしょう。 」
3歳までに母国語をしっかり覚えたお子さんにとって、辛い試練だったでしょうね。
それはさておき、聴覚ってそんなに早くから発達しているから、胎教モーツァルトなんてことも実際にありだったんですね。
ちなみに、お年寄りが脳梗塞などでしゃべれない、目が開けられなくなっても、耳だけは最後まで聞こえているそうです。
耳って、単に音を拾うだけの器官じゃない、人にとって何かもっと重要な役割があるのかも。
参考文献 Newsweek 1997.6.11 0歳からの教育・脳は文法を知っている・日日家庭のフランス生活
息子の成長の記録は 時計の逆回転で綴っています。 どうぞ にたろう もご覧ください。
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