はじめに触れさせていただくのは、 知り合いのお子さん、4人兄弟の4番目のお子さんのことです。
小さい時からの夢が「医師になること」。
お父様はお医者さんです。
ご両親は、どのお子さんにも、医師になるのは覚悟が必要だから無理してなる職業ではない、自由にしていい、と言ってこられたそうです。
それでも、
上のご兄弟は全員医学部へ進学し、そのお子さんも一浪後医学部に進学されました。
順風満帆を絵に描いたような結果ですよね。
なんですが、
なんですが、
なんと、そのお子さん、医学部進学後に希望を見失い、医師になる将来を考え直そうとしていらっしゃるそうです。
そもそも、他にやりたいことがあった、のだと。
もう一度書きますが、ご両親が、お子さんに対して医師になることを希望されたわけではありません。
医学部志望は、お子さん本人が決めたことだそう。
浪人中、医学部に行けなかったら別の道へ進むことを選択肢として考えてはいらしたそうですが、
第一志望の医学部に合格したのに…
もったいない。
ん?もったいない?
非医から医学部再受験をめざす人には、頑張るね・すごいね、という表現がよく使われますが、
逆だと、もったいない?って言っちゃう?
いやそもそも、自分のやりたいことをやるのがその人の幸せな人生だから、もったいないわけではないのでは?
うーん、難しいですね。。。
もちろん、よそ様のお宅のことなので、詳しくはわかりませんが、
行きたくて行ったはずの進路でも、こんなことが起こるんですね。
この話を伺ったとき、ワタシも少し動揺しました。
東大の進学選択は中学受験みたい
次は、東大の進学事情について。
東大は、進学選択制度(進振り)があるため、1年生と2年生の夏までの成績で、成績の良い人から順に行きたい学部学科へ行ける仕組みになっています。
よく、東大は入学してから進路を決めることができるから受験をすることにした、という人がいますが、
進路を決めることができる ではなく実質、 もう一度ゼロから競争させられて、成績順に行きたいところが決まっていく
システム。
多くの東大生は、大まかに行きたい学部学科を決めて入学するものの、進学選択時は自分の進路を悩みますし、行きたくても行けないということも起こり得ます。
制約はありますが、理転、文転の方もいらっしゃいます。
東大生だからと言って、人生でやりたいことがはっきり決まっている人ばかりじゃない、むしろ、今まで東大合格を目標にしてきた人からすると、進学選択は大きな関門です。
息子も行きたい方向は決めて入学したものの、人気の学部学科が年によって変わる(=底点が変わる)ため、もとから希望しているところに進めるかどうかは結果が出るまでわかりませんでした。
東大の目指すところは違います。前期課程で幅広く教養を学び、後期課程では専門分野を極めることを目的としています。これは、米国型リベラルアーツ教育の伝統を汲んでおり、国際基督教大学ではその教育力が高く評価されているそうです。
しかしながら東大では、進学選択制度のために、学びたいことを学ぶより、いい成績を得ることが勉強のモチベーションにならざるを得ず、またそれが、自分が何を学びたいのかを考える機会を先延ばしにされていると感じる学生さんもいるそうです。
東大新聞「教養の確立は成功しているか」より再構成
進学選択は、第5希望くらいまで書くことができます。でも、実際、本人に第5希望まで夢と希望があるかというと、
ないですよね。
心の中を占める割合を考えた時に、第1希望が6割、第2希望が3割、、、残りの1割の中に第3・第4…って入っていくとしたら、第1希望以外に決まってしまうと、
モチベーションの維持が難しいのでは…
例えると、中学受験みたいな感じでしょうか。
「浪人」はほぼできない(=必修科目の成績の上書きが難しい)ので、
行けるところに行くしかないところが、中学受験に似ているな、と感じました。
しかも塾もない、発破をかけてくれる親もいない。
分野が変われば勉強内容が変わってくるので、就職先が変わるかもしれない。
決まったら、そこに進学するしかない。
それが、東大合格後に待ち受けています。
理2から医学部へ行く人もいれば、余裕で行きたいところに行く人もいます…でも、
将来なりたい職業を決めていたのに、その学部に行けなかった人も…います。
大変な世界です。。。
後悔のない進路を志望する、決めたら絶対勝つ試合をする
ここからは、我が子たちの高校時代~大学時代のことです。
我が家の場合、進路希望分野は1年の時から決めていました。
息子は、高1の時から東大理一志望、娘は、国医志望でした。
本人が決めました。
親と相談することは必要ですが、決めるのは本人です。
っていうか、本人が決めた形にしないといけません。
(たとえ裏で親が誘導したとしても)
そして、決めたら、絶対勝つつもりで準備をしなければいけません(でした…)。
絶対勝つ試合とは、
たとえ入試当日に体調が良くなくても合格する実力がある
とか、
高3秋の冠模試の二つでA判をとる
レベルです。
実際、高2の時に先生方によく言われたのが
秋の高3生を見ていて、これを1年前から始めていれば、劇的に右肩上がりなのにな、と毎年思う
という言葉でした。
大学受験は、実は高2の時が一番厳しくて、
その中でも、高2の2学期あたりが一番厳しい。
これは、息子の時に一番想定して気をつけていたことです。
息子の高2時代が大変だったのは、学校の授業とそれ以外(駿台、数オリ…)を別建てで勉強していたからですが、
世の中でよく言われることに目を向けると、
鉄緑会は高2の12月に校内模試があって、その成績で高3のクラス分けが決まりますし(成績次第では方向転換も考えなくてはいけません)、
科学オリンピック系は高2のうちに日本代表が決まり、代表になると、高3の夏までそれに時間を取られます。
頑張る内容もクオリティも人それぞれですが、大変なのはみんな同じですし、
そこを頑張りぬいたら、高3では入試に照準を合わせた勉強をすることができる
と、身をもって感じていました。
そう。高3が明らかに楽なんです。
実は我が家の場合、上の子と下の子で違っていたところがありまして、
ぶっちゃけ、高2終了時点で英数国を仕上げる、なんて、上の子の時は全然意識できていませんでした。
ワタシも、本人も。
上の子(娘)の時は、ふわっと高2を秋まで過ごして、冬からエンジンがかかった感じでした。
ふわっと、とか、感じ、と表現している時点で、ワタシの準備不足がまるわかり…ですね。。。
いわゆる高3の0学期スタートです。
国立医学部志望=選択肢が多い のもいいような悪いような、、、結局、高3秋になってから、絶対勝てるところまで下げて大学受験しました。
当時、下げるのはもったいないとチャレンジを薦めたのはワタシ、絶対浪人したくないから下げると決めたのは本人で、
本人の意思を尊重しました。
それでもね、大学2年生になってから、娘は、当時のことはあまり覚えてない、チャレンジすればよかったかな…などと言っていて、
またそれがさらに学年が上がると、今はこれでいい、次のステージでチャレンジする、と言うようになりました。
医学部というところは、基本的にどの大学もカリキュラムが一緒で、最後は国家試験につながりますし、国家試験の点数で就職場所や生涯年収が大きく変わるということはありません。
むしろ個人の医療に関するスキルや人間力に係る部分が大きいので、気持ちの立て直しもしやすいです。
とはいえね、、、当時、志望大学は本人が決めました!と、ここでワタシがイキって言ってもね、
若干17歳の子が決めたことですよ。
大きな根拠があったからというより、その現状から抜け出したいという気持ちが勝って決めたということも否めません。
それはうすうすわかっていましたけど、
それでも、あの時本人に決めさせてよかったと思っています。
下の子(息子)は逆に、ブレずに東大に合格することだけに照準を合わせた高校時代を過ごしました。
なんて表現すればいいかなぁ、、、娘の時は道の見えない霧の中をずっと歩いていて、光を見つけ検問のない道を見つけたという感じ、
息子の時は、光も当たっている道の上を最初から歩いているけれど、検問がしょっちゅうある感じ、
でした。
道はいろいろありますが、親が光を当てて道が見えるようにするのではなく、自分で光を見つけることが大切だったのでしょう(と思いたい)。
そして、進学した東大で教養課程を過ごし、息子の進学選択の結果ですが、、、
息子の進学選択の結果
おかげさまで、なんとか第一希望の学部学科に進学できることになりました。
第2外国語で選択した中国語と相性が良くなくて、得意の数学&理科系の科目の成績の足を引っ張り、ちょっとヤバかったのですが、、
やれやれ。
それでですね、ちょっとスキルっぽい書き方になってしまいますが、
上でも書きましたように、 東大の進学選択は、 1年生の成績でかなり決まります。
1年の夏に出る成績も案外大きく影響します。つまり、入学直後です。
1年生は語学の単位が多いので、語学で成績をとれないと全体に響きますし、
理一は、数学や理科科目の必修科目も多いので、こちらについていけないと厳しくなってしまいます。
これから東大へ進学される方は、 入学したときのポテンシャルがある程度影響してくると意識しながら、
合格してもぜひ、勉強だけはしてくださいね。
以下、息子の談話です
第2外国語は中国語が易しいと言われますが、だからといって優上や優をもらえるとは限りません。先生との相性もあります。”易しい”とか”多くの人が選択する”などといった言葉に惑わされることなく、一番やりたい語学をやってね
(語学によってクラス分けされますけど、クラス分けは大切ですけど…それでも一番やりたい語学をやってね)
このように、東大入学、進学選択を経て、理系の東大生は、ほぼほぼ皆さん修士課程まで進学します。
そして、その後のことを先日耳にする機会がありました。
ある東大理系の先生によると、
一番優秀な層は、研究者になる か 起業する
のだそうです。
次に優秀な層が、いわゆる超有名優良企業に就職する(今なら、グーグルとかですね)
その次の層が、日本の有名企業に就職する
らしいです。
この現象を、約30年前のアメリカと重ねていらして、要するに Apple とか Microsoft などのことですけど、
ワタシ達親世代が、先入観で、起業なんてとんでもない、一部上場企業に就職しなさい、などと言ってはいけませんよ、
とのこと。
先が分からない時代。
無知ゆえに子どもの足を引っ張った、というようなことにならない親でありたいな、と思った次第です。
子育ては、難しい
最後は、
冒頭の医学部在学中のお子さんに話に戻ります。
今は、別の道を探りつつ、医学部は休学中だそう。
ご両親は、
医師になるには多額の税金がつぎ込まれる。
中途半端に医師免許だけ取って医師にならないなら、すぐに辞めて別の道を歩んでいい。お金は親がなんとかする。
という方針なのだそうです。
なぜ、お子さんが今そう考えたのか、今後どうバックアップしていくかも考えなければいけないと、おっしゃっていました。
お子さんのことをよく理解しようとされ、かつ応援される姿に、ワタシも学ぶところが多いです。
後悔しない選択、というより、考え抜いて覚悟して決めた選択なら、後でそれを方向修正したとしても、
たぶん後悔はしないでしょう。
親が口出ししなければいけない部分、口出ししてはいけない部分、まだまだ混沌としている我が家です。
娘の成長記録は時計回りで綴っています。どうぞ いちひめ もご覧ください。
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